引き込まれた洞穴ショー

引き込まれた洞穴ショー

【2022年8月】イタリアのシチリア島のシラクサには、ネアポリス考古学公園という紀元前5世紀のギリシャ劇場や紀元前2世紀のローマ円形劇場などの遺跡が集まった場所があります。

シラクサのネアポリスでの洞穴ショーで出迎える牧神パン
牧神パンが観客を出迎える

私達のガイドブックには「これこそがシラクサの魅力」と絶賛している観光名所ですが、前述した通り、私はあまりの暑さで気分が悪くなったので、ここの見学は割愛しました。

正直なところ、よっぽど面白いガイド付きでないと、遺跡見学は苦手なのです。

けれど、このネアポリスでショーがあると知り、そのチケットは事前購入しました。

「アレトゥーザとポリフェーモの神話」という演目で、ネアポリス内の洞穴での開催です。

どういったショーなのか、全く分からなかったのですが、遺跡の中の洞穴が会場だという意外性に惹かれました。

確か、一晩に2,3回、開催していましたが、私達が行ったのは午後8時半からの公演で、チケットは一人€25(3700円ほど)。

ネアポリスに向かって歩いていたら、予報では降らないはずの雨が降り出しました。

敷地に入ったら、雨が本格的な土砂降りになり、開演まで、建物の軒下で雨宿りしながら待つこと約20分。

ビーチパラソルをさしている家族もいました。

シラクサのネアポリスでの洞穴ショーで、泉の上に立つ女性
洞穴の泉に立つ女性が物語を語る

結局、観客は約20名。

誘導されて、おおきな洞穴へ。

まず、半人半獣の牧神パンが我々を迎えます

イタリア語オンリーなので、私には全ては分からないのですが、れっきとした俳優で、人を魅了します。

光の演出がうまく、影が浮き上がっている様子も素敵でした。

さらに中に入ると、洞穴内の泉の上に台が三つ浮いていて、その上に女性が一人ずついます。

シラクサのネアポリスでの洞穴ショーでの光の演出
素晴らしい光の演出で雰囲気が盛り上がる

リフレクションがきれい。

彼女たちはその台から動かずに、セリフを言い、動作をして見せるのですが、物語に沿って周囲の映像が変わっていきます。

それが目を見張る美しさで、すっかり引き込まれました。

ショーは、アレトゥーザの物語とポリフェーモの物語の2部から成っていました。

シラクサに関わり深いアレトゥーザの物語は、ニンフである彼女が純潔を守るために、川の神アルペイオスから逃げて泉になるというもの。

シラクサ市内にあるアレトゥーザの泉には2日前に行きました。

シラクサのネアポリスでの洞穴ショーにて
花の楽園も光で作られている

アレトゥーザが水浴びをする場面では、俳優さんが素っ裸に。

光の加減のせいか、まるでボッティチェリのビーナスのようでした。

アルペイオスの姿はなく、音と映像で表されていました。

二つ目のポリフェーモの物語は、一つ目の巨人ポリフェーモが、美しい海のニンフ、ガラテーアに恋する話

ガラテーアが語る形で進められます。

ガラテーアには羊飼いのアチという恋人がいるのですが、嫉妬に狂ったポリフェーモは岩を投げつけてアチを殺してしまいます。

シラクサのネアポリスにある「耳」の洞窟
その形から「耳」と呼ばれる洞窟の中

嘆き悲しんだガラテーアを不憫に思い、父である海の神がアチの血で川を作り、その川が流れ込む海でガラテーアとアチは永遠に一緒に暮らせるというストーリー。

その昔、シチリア島のエトナ山に近いところにあるアチレアーレという町に行ったことがあるのですが、地元の人は、ここに流れる川を、羊飼いのアチの血の川だと呼んでいるそうです。

と書くと、ポリフェーモはわき役のようですが、ポリフェーモが、全てを捧げるので、ガラテーアに自分の方を向いてほしいと懇願するところがミソで、見ていてポリフェーモが可愛そうに感じたことでした。

ポリフェーモも光の演出で表現されていました。

本当に良くできていたショーで、美しく、上品で、作った人のアーチストとしての技量の高さに感心しました。

ショーが終わった後、遺跡の敷地内にある別の洞窟も見学。

「耳」という人工の洞窟で、昔、囚人を入れていたところだそうです。

声が響くので、洞窟の上にいる看守が、囚人のおしゃべりを聞き取っていたという話でした。