【1996年9月】パキスタン北部の桃源郷、カリマバードの続きです。
この辺りの人々は、かのアレキサンダー大王の子孫だと自称しているとかで、実際、髪の色が薄く、青い目をした人も多いです。
すれ違う度に「ハロー」「How are you, sir」と言って握手をするのですが、その一人は、赤毛の口髭を蓄えたお爺さんでした。
皆さん、イスラム教徒ですが、規律が厳しくない宗派らしく、女性も顔を隠していないばかりか、数人の女学生たちとはあいさつを交わし、写真を一緒に撮りました。
でも、女性は女性に話しかけ、男性は男性に話しかける傾向は認められましたが。
バルティット・フォートに近い高い地域は、下の方よりも地元の人の生活の場らしく、ヤギの群れを率いた人や、大きな籠をしょった女の人達、はだしの子供たちなどを見かけました。
角の店の外で、目の色の薄いお爺さんがミシンをかけています。
旅の連れが、サルワール(この辺の人が皆はいている幅広のズボン)を欲しがっていたので、このお爺さんに話しかけました。
その結果、隣の店で生地を買って作ってもらうことに。
気に入った色の生地が、サルワール・カミーズのスーツにするには足りず、欲しかったズボンだけ作ってもらうことにしたのですが、そこにいた男たちには、そのアイデアがおかしてくてしょうがないらしく、笑い転げていました。
それから、ジョンと名乗る男性が寄ってきて、自分の家に来ないか、と誘いました。
何か魂胆があるのだろうとは思いましたが、ついて行くと、彼の家はガイドブックに写真が載っている家で、写っている女性は彼の母親だとのこと。
靴を脱いでシンプルな四角い部屋に入ると、彼の両親と2人の子供がいました。
父親であるお爺さんは90歳を超えているとかで、昔、英国の軍隊にいたのだとか。
2歳だという女の子(発音は忘れましたが、名前の意味は良子ちゃん)がシリアスな美人。
何だかだと話した後に、魂胆の正体が現れました。
ジョンの妻と母が作っているという刺繍の帽子です。
『良子ちゃん』にはよく似合いましたが、私が被ると、それはもう無様。
でも何か買わないと事が収まらない様子だったので、小さい巾着を200ルピー(当時、1ルピー=約3円)で買いました。
細かいスティッチが施されているので、記念としては良いかな。
ところで、鏡で遊んでいた『良子ちゃん』が柄を壊してしまいました。
怒った父親にぶたれ、泣きそうになりましたが、大声で泣きだすに至らず、ものすごく悲しそうな顔で部屋を出て行きました。
日本の2歳の子には考えられない我慢です。
この子に限らず、この辺りで見かける子供は皆、大人びた表情をしています。
ちなみに、中国では日本のエアポートリムジンや佐川急便の車をよく見ましたが、ここでは「八王子自動車教習所」「安城自動車教習所」など、教習所の車のお古がけっこう、走っていました。