【2017年11月】イタリア中部のアブルッツォ州にあるグアルディアグレーレには、歴史的に有名な二コラさんが二人います。
一人は金細工師で彫刻家でもあった二コラ・ダ・グアルディアグレーレ。
この苗字は、「グアルディアグレーレ出身の」という意味ですから、固有の苗字がなかったのでしょうか。
有名なダ・ヴィンチもそうですから、昔はみんなそうだったのでしょうかね。
14世紀末にここで生まれ、1459年にここで亡くなったとされるこの人は、金細工界では、ミケランジェロとかダ・ヴィンチに匹敵するマエストロなのだそうです。
この地方の数多くの教会で聖体顕示台や、アンテペンディウムと呼ばれる祭壇の正面部分などたくさんの作品を残したそうです。
この町の中心的な教会であるサンタ・マリア・マッジョーレ教会の正面の彫刻も彼の作品ですが、現在、見られるのはコピーで、本物は博物館に保管されているとのこと。
私達を案内してくれた地元の歴史家のルーチョさんによると、二コラは芸術面で活躍しただけでなく、政治的にも力を持っていたそうです。
そして、この人がここにいたから、この町はメタルワークのメッカとして有名になったという話でした。
もう一人の二コラさんは、10世紀に生きた「ギリシャの聖二コラ」と呼ばれる聖人。
その遺骨がこの町の聖フランチェスコ教会に置かれています。
この教会に入ってみました。
以前は、この遺骨が箱に入れられて、祭壇の台の中に置かれてあって、台の表に作られた窓から人々が手を差し入れて触れる仕組みになっていたとのこと。
現在は祭壇の裏の棺の中に収まって、毎年5月に彼にちなんだ儀式が行われるのだそうです。
こういった説明をしてくれたルーチョさんは、同僚の若い歴史家と一緒に古文書の調査をし、金細工師のほうの二コラのオリジナルのサインを発見したのだそうです。
また、昔の墓場に埋められていたコインが、この地方のものでなかったという事実を題材にして、このコインがどこからどうやってここに辿り着いたかを推測する内容の小説を書いて出版したという話でした。
彼のおかげで、とても充実したひと時が過ごせました。
今回はサンタ・マリア・マッジョーレ教会と聖フランチェスコ教会の二か所に絞って説明を聞いたわけなのですが、町自体も良い雰囲気だったので、できたら、もっと日が長い季節に再訪して、散策してみたいと思います。