【2024年10月】フランスに住む友人カップルが北イタリアの我が家に遊びに来たので、日帰りできる名所を数か所めぐりました。
その一つが、うちから列車で10分ぐらいのモンツァ。
以前、我々が半分住んでいた(ロンドンと行き来していた)馴染みの場所で、今も少なくとも週に2回は行っている町です。
そこに、こんな素晴らしい宝物が隠されていたとはーー。
いや、あちらは隠しているつもりではないのでしょうけれどね。
ドゥオーモ(大聖堂)の外観が素晴らしいのはもちろん、知っていましたが、中には確か、一回しか入ったことがなかったと思います。
今回、ちゃんとチケットを買って(一人€9)、その日の午後2時半からの英語のツアーに参加しました。
見るのは、普段閉ざされている「テオドリンダのチャペル」で、お宝は「鉄の王冠(Corona Ferrea)」。
このチャペルは、テオドリンダの生涯を描いたフレスコ画で埋め尽くされていて、目を見張ります。
まず、このテオドリンダという6世紀末から7世紀初めに生きた女性の説明から始まりました。
この人はバイエルン地方の貴族の娘で、ランゴバルド王国の王妃になります。
最初の夫が死亡した後、次の王様と再婚。
単なる王妃というだけでなく、最初の結婚、次の結婚にかかわらず、ランゴバルド王国を実質、統治し続けた人物だそうです。
再婚相手も自ら選び、国の安定・繁栄に尽くしたとのこと。
このモンツァのドゥオーモの元を建てたのも彼女です。
で、鉄の王冠ですが、キリストが磔にされた際に使われた釘を引き延ばして作ったという言い伝えのあるものだそうです。
これもテオドリンダが作らせたものとされています。
一連の説明の後、防弾ガラスの箱に入れられた冠がうやうやしくお出ましになりました。
小粒ですが、豪華な装飾が施された王冠です。
見学者から、「ほうっ」という声が上がりました。
この王冠は信仰と権力の象徴とみなされ、代々、ランゴバルド王がこれで戴冠したほか、有名どころでは、西ローマ帝国のカール大帝(774年)、神聖ローマ帝国のフリードリヒ1世(1158年)、ナポレオン(1805年)も使用したとか。
ナポレオンは、「神がこの王冠を私に与えた。これを触る者は心せよ」と言ったという話も。
ま、確かに王冠も素晴らしいのですが、私はやはり、こんな身近に、歴史的な素敵な女性にまつわる場所があったことに感動しました。
このテオドリンダのチャペルは、残念ながら、写真撮影が禁止されていました。
なので、王冠の写真もありません。
大聖堂の本堂はその禁止令がないようでしたので、見える範囲で、遠くからちょっと撮りました(タイトルの写真)。
大聖堂のその他の部分もフレスコ画がたくさんあったし、バラ窓も素敵。
モンツァはとかく、F1の開催地としてしか話題に上らないようですが、こんな輝かしい歴史を背負った宝物があることを知ってほしいものです。