【2024年4月】アルバニアのブトリント遺跡を見てランチを食べた後は、ホテルに戻って自由時間となる予定でした。
ところが、たぶん、ツアーの人々がホテルのあるサランダではすることがないと、文句を言ったのでしょう。
ガイドが機転を利かせて、遺跡の周囲に広がるブトリント湖をボートで巡るイベントを急遽、オーガナイズしてくれました。
ボートを操縦するのは、この辺りで盛んなムール貝養殖の漁師たち。
12人のツアー参加者が6人ずつ二手に分かれて、2隻のモーターボートに乗り込みました。
私達が乗った方は、若めの人が船頭さんで、スピードも速く、スリル満点。
気持ちが良いこと、この上ありません。
しばらく走って上陸したのは、アリ・パシャの砦跡がある島でした。
アリ・パシャはオスマン・トルコ時代にアルバニアで有力だった総督。
彼が砦を築く前、アルバニアの一部がヴェネツィア共和国の傘下にあった時代には、ヴェネチア人の屋敷があったところだったそうです。
もっと近年の共産主義時代には、ここはギリシャのコルフ島に逃げる人々を監視する見張り地点だったという話でした。
この島はブトリント湖からアドリア海に通じるヴィヴァリ水道という細長い水路にあり、監視に持ってこいの場所だったようです。
ここで少し時間を過ごした後、再度、ボートに乗り、今度は湖の中の方へ。
途中、岸辺に共産主義時代に75万基も作られたという防空壕がいくつか見えました。
長く鎖国状態にあったアルバニアですが、為政者には、敵から攻め入られるとの危機感が常にあったらしいです。
これを過ぎて、しばらく走ると、ムール貝の養殖場に着きました。
もう一方のボートを操縦していたお爺さんが、ムール貝の束を持ちあげて見せてくれました。
そして、生のムール貝を食べて見せ、我々にもどうか、と誘いましたが、みんなお腹を心配して遠慮。
ガイドが一つ食べましたが。
ムール貝にも雌雄があり、生まれた赤ちゃんを紐につないで1年置くと、大きく育つのだそうです。
このお爺さん、我々が見に行ったのが嬉しかったらしく、ムール貝を素手で持ち上げて見せてくれたために、手を切ってしまいました。
いつもは、手袋をはめて触るのに、と言っていました。
軽い切り傷で済んでいるといいのですが。
それからまた、真っ青な空の下、しぶきを浴びながら疾走して、湖の岸へ。
岸辺ではムール貝養殖に携わる人々が荷揚げをしているのが見え、ちょっとした絵画のようでした。
全く予定になかったこのイベント、この旅のハイライトの一つとして記憶に残っています。
最初は、ちょっと苦手だと感じたガイドでしたが、こうした機転の利かせ方を見ると、経験のある人なのだな、と見直した次第です。