【2019年8月】イタリアのミラノには用事があってよく行くのですが、今回、日本から友達が来たので、これを機会に初めてブレラ美術館を訪れました。
ブレラ宮という大きな建物の一角を占めていて、その他の部分には、美術学校、図書館、ブレラ天文台など6つの機関が入っているとのこと。
この美術館の発起人はナポレオンで、「イタリアのルーブルにしよう」と思って作ったとか。
それで、中庭と内部の両方に、大きなナポレオン像が立っているのですが、ナポレオン本人は、この像がヌードなのが気に入らなかったと説明書きがありました。
こんな具合に、この美術館の特徴の一つは、作品の説明だけでなく、作品やその作家にまつわる小話も同時に知らせてくれていることです。
例えば、カルパッチョとベッリーニの作品だけの部屋があり、友達と「まるで食べ物の部屋のようだ」と話していたら、カルパッチョに関しては、あながち間違いでもないことが判明。
説明書きを要約すると:『このカルパッチョの絵の展覧会を大々的にやっていたヴェネチアに、生肉しか食べない伯爵夫人がいました。
シェフは毎日、料理に工夫を強いられたのでしたが、ある時、テンダーローインをハムのように薄くスライスしたものに、独特のソースをかけて出したところ、伯爵夫人がいたく感動。
「この料理をこれから、カルパッチョと呼びましょう」と宣言したので、この料理名が定着しました。』
こういった小話のほか、ところどころには有名人がその絵を見て感じたことが記された絵もありました。
例えば、ピエロ・デッラ・フランチェスカの「ブレラ・マドンナ」の絵には、日本の作家の小川洋子さんの感想が説明書きの脇に掲げられていて、「これは静寂の絵です」と始まる文が載っていました。
聖母マリアを中心に、4人の天使(には見えない4人の女性)が並び、ひざまずいているのが絵を発注した人の姿だという絵で、のっぺりと表情のない人々が並んでいて、独特でした。
どの作家だか忘れましたが、注文主の懐具合によって、自分自身が手を入れる度合いを決めていたちゃっかり者もいました。
払いの悪い注文主への絵はほとんど、弟子に任せていたという話です。
この美術館はまた、絵をどう保管しているのかや、修復しているところなど、裏方の仕事も見せているのも特徴でした。
宗教画がほとんどなのですが、それを見ながら同行の友達が「聖人とかって体毛はなかったんだろうか」と素朴な疑問を発したので大笑い。
そうそう、カラヴァッジョの絵も一枚ありました。
カラヴァッジョが活躍した16世紀末ごろには、光を限った画風が人気だったようで、周辺には暗めの絵が多かったのですが、カラヴァッジョの絵がダントツに素晴らしいことは素人目にもよく分かりました。
最後の部屋には有名なフランチェスコ・アイエツの「キス」があり、その横に、その「キス」を壁に飾っている部屋で、寂しげな表情の若い女性がロケットペンダントを見ている絵が並んでいました。
ジローラモ・インドゥーノという画家が描いた戦争に行った恋人を思う女性の姿の絵で、題名が「悲しい予感」。
この絵が一番、心に残りました。
美術館や博物館はたいてい、出る前のところに売店があるものですが、ここにはありませんでした。
カフェはあったので、一休みしましたが。
売店はまったく別のところにあったらしいですが、私達は行き着けませんでした。