【1996年9月】中国の新疆ウイグル自治区西部の町、カシュガルは大変、気に入ったので、もっと長居したかったのですが、すでに予定より一泊多く泊まったので、後ろ髪を引かれる思いで出発しました。
早起きして、標高が4700メートルほどあるクンジュラブ峠を超える一泊二日の路線バスが出発するチニワコ賓館へ行ってみると、バス一台と人々と荷物が雑然と散らばっていました。
このバスに乗ったのは、私を含めた日本人が5人と、英国人が2人、残りはウイグル人とパキスタン人。
270元(当時、1元=約13円)の切符を買い、おつりの間違いを指摘し、パスポートと切符と5元を係員に渡して、リュックをバスの天井に乗せます。
秩序の感じられない空間でしばらく待っていると、やがてバスのドアが開きました。
係員がパスポートの名前を読み上げながら、一人ずつバスの乗せようと試みましたが、ずるずると呼ばれていない現地人が入って行きます。
英国人のおじさんに倣って、私達は窓から手荷物を投げ入れ、進行方向左側の席を確保しました。
正午の出発で、ガイドブックにあった例よりはスムーズだと思っていたら、バスのエンジンの調子の悪さは本に書いてある通りで、停まっては修理、を繰り返しながら、カラコルムハイウェイに続くG314国道を進んでいきます。
だんだん景色が良くなってきました。
砂山、岩山、雪山を背景に、川が流れています。
羊やヤギが飼われていて、石を積み上げた小さい家々がところどころに現れます。
人々が住むユルトも見かけました。
標高が高いので、光の加減が独特です。
美しさの極め付きは、標高3600メートルというカラクリ湖です。
縁の方が紫で、中の方はオパールのような輝き。
周りには7000メートル級の山々が控えています。
時刻によって色を変えるという湖ですが、私達がここを通ったのは、北京時間の午後7時過ぎでした。
ここでバスがえんこしてくれればいいのに、えらく調子が良く、フルスピードで通り過ぎてしまいました。
これが路線バスの悲哀。
バスの窓から必死で写真を撮りました。
そして、これまでの人生で見た景色の中で、一番、美しい景色としてココロに残りました。
カラクリ湖を過ぎると、牧場風景が続き、ラクダの姿も。
子供たちがバスに向かって手を振っていました。
検問所がいくつかあり、この日の宿があるタシュクルガンには午後9時半ごろ到着。
9時間半に及ぶオンボロバスの旅でしたが、次々に現れるドラマチックな景色のおかげで、あまり辛く感じませんでした。
着いた後は、バスターミナル脇にある交通飯店に他の乗客とともにぞろぞろ入りました。
部屋は60元と今までで一番安かったのですが、やっぱり寝具がなんとなく汚く、トイレの水は、自分で洗面器に汲んで流す方式。
こんなところですので、あれこれ言えません。
夕食は、バスで一緒だった英国人のおじさんと一緒に三人で、この町の一本道の先にあった店へ。
「ご飯か麺か、牛か鶏か」と聞かれ、麺と牛を選んだら、芋がゴロゴロしている中に肉がちょっぴり入った炒め物を持ってきました。
これを半分ぐらい食べ終わったところで、きし麺風の麺が出てきました。
それとビール2本で、全部で104元というから仰天。
おばさん一人できりもりしていて、大変なのは分かりましたが。。。
この英国人のおじさんは、オマーン在住で、妻子を残して一人で旅行に出てきたそうです。
アフリカの奥地にも住んだことがあり、今はオマーンで会社を経営しているとか。
いろんな人がいるものです。