【2024年3月】英国最後の国内旅行、イングランド南西部のトーキーからの帰りに、ドーセット州のシャーボーンに寄りました。
ここにもまた、会いたい人がいたからです。
彼女はかなり高齢なのですが、自分で車を運転して迎えに来てくれました。
シャーボーンは歴史のあるマーケットタウン(市場の開催で栄えた町)で、裕福な層の子女が行くパブリックスクールで有名ですが、ネット情報によると、住民の三分の一近くが65歳以上だそう。
お年寄りが住みやすい町というのは、良い町に違いありません。
彼女とのひと時を過ごした後、この町で一番の見どころであるシャーボーン・アビーに行きました。
それほど有名な教会ではないと思っていましたが、ちゃんと日本語のパンフレットもありました。
それによると、西暦705年からの歴史がある教会だそうです。
入ってみて、その豪華さにびっくり。
特に天井の素晴らしさには目を奪われます。
こうした天井の形式をファンヴォルト(扇状型天井)というのだそうです。
完成したのは1490年ごろだとか。
夫が「これまで見てきた英国の教会の中では、一番かもしれない美しさだ」と感嘆の声を上げていました。
そしてメンテナンスが行き届いているところを見ると、この町がいかに裕福かということが分かります。
もらったパンフレットに面白い話が。
中世にはベネディクト派の修道士によって管理されていたそうですが、1437年、洗礼を受ける度に修道士から謝礼を要求されることに市民が我慢できなくなり、隣接する小さい教会に自分たちの洗礼盤を作ったそうです。
怒った修道士たちが、町一番の力持ちの肉屋を雇って、ハンマーでこの市民の洗礼盤を破壊したという話。
これをきっかけに暴動に発展したのだそうです。
でも、1539年、修道士たちが、離婚をしたくて宗教改革を起こした国王ヘンリー8世に降伏したことで、このアビーは市民の教区教会になったとのこと。
スコットランドの数多くのアビーのように、宗教改革時に見捨てられずに本当に良かったですね。
今もそのまま、教区教会だそうですから、この辺の人々は、こんな素敵な教会で結婚式を挙げるのでしょう。
英国最後の旅で、これが見られて本当に良かったです。
アビーを出た後、ゆっくりと町歩きに興じたかったのですが、何せこの日は雨。
黄色っぽい石造りの古い家々が建ち並ぶ様子は、絵のように美しいのですが。
むしろ、雨でよけいにしっとりとしたムードを醸し出していたのかもしれません。
雨のせいで行き場を失ったので、予定していた列車より1本早い列車でロンドンに帰りました。
その晩はヒースロー空港の近所のホテルで一泊し、翌朝、長年住んだロンドンを後にしたのでした。