【1999年5月】その日はイラン北西部の西アゼルバイジャン州にあるタカブという町に泊まりました。
この辺りでは大きい町であるハマダーンの北西250キロ弱の地点にある町です。
ここへの道中、運転手のアリはちょこちょこと車を停めて「アガァー、タカーブ?」と道行く人々の道を尋ねました。
この「アガァー」が独特。
ガの音程が高く、その後の余韻のアーが波打つような音です。
日本語で言うなら、「すみませーん」といったところでしょうが、意味的には、英語の「sir」に当たる言葉のようです。
このタカブで泊まったホテルには良い柄のカーペットが敷かれていて、どこで買えるか、値段はいくらか、と聞きたいほどでした。
なんとなく聞きづらくて、そのままにしてしまいましたが。
タカブでは、郊外にあるササン朝ペルシャ時代の遺跡、タフテ・ソレイマーンを見学。
世界史で習って馴染みのあるササン朝ペルシャ(紀元226~651年)ですが、その国教は火を崇めるゾロアスター教でした。
なので、ゾロアスター教の遺跡としても有名なのだそうです。
ペルシャ語で「ソロモン王の玉座」という意味のこの遺跡は、火口湖を中心に出来上がっています。
この火口湖にソロモン王が怪物を沈めたという伝説があるからだとか。
私にとってのハイライトは、ここを案内してくれた考古学者。
ここで4年仕事をしているそうで、物静かに話す様子が上品です。
昔見たドイツ映画、「Uボート」の船長に似た面持ちで、目が透き通る青さ。
顔の色が、髭を含めて黒っぽい中、この青さがひときわ目立っていました。
歯がだいぶ、抜けていたのがなんでしたが。
もう一人、ここの主のような人もいて、そのお爺さんもスゴイ顔。
しわが深く刻まれていて、皮膚はレザーのようです。
くそ暑いのに、毛糸の帽子を被り、セーターを着て、サルワールを履いていました。
もっと厚かましく、こういった印象的な人々の写真を撮っておけばよかったなあ、と後で後悔。
この遺跡の付近の風景も素晴らしかったです。
一般の人々の土壁の家々がすでに、遺跡のよう。
その周辺で派手な色合いの服をまとった女性達が働いている様子は絵になりました。
タカブの町では毛糸屋さんに行って、毛糸を買いました。
絨毯を織るための毛糸ですが、編み物にも使えるでしょう。
タカブの人達は、この毛糸屋をはじめ、皆さん人懐こさがあって感じが良かったです。
余裕があったら2泊ぐらいして、町をぶらぶらしたい感じでした。
ところで、イランでの買い物の仕方。
伝統的に、売り手と買い手が値段交渉して合意します。
そして、買い手がその金額を払う段になると、いったん売り手は「そんなお金は、もったいなくて受け取れない」というジェスチャーをするのだそうです。
その話をガイドのハリルから聞いていたのですが、この毛糸屋さんで初めて体験しました。
お金を渡したら、「いやいや。。」というジェスチャーをされたので、一瞬、びっくり。
ハリルに「言ったでしょう」と言われて、そうか、と納得し、結局、ちゃんとお支払いをしました。