楽しい墓地

楽しい墓地

【2022年8月】大英博物館やタワー・ブリッジがロンドン観光の主役級とするなら、このハイゲート墓地は脇役程度でしょうか。

ロンドンのハイゲート墓地にある美しい天使の墓石
こんな美しい墓石も

一度は行ってみたいと思っていながら、これまで行ったことがありませんでした。

ハイゲート墓地は西側、東側の二つに分かれていて、古いほうの西側に入るにはツアー(£15)に参加する必要があります。

なので、私達の住むロンドン市内ながら、ツアーを予約し、さらにレストランも予約するという、いつもの小旅行の手順を踏んで出かけた次第。

しかもツアーが10時半と早かったので、日曜日なのに早起きをしました。

アリスというガイドさんは、人を笑わせるようなことは言わないけれど、真面目過ぎてつまらないということもなく、はっきり話してくれたので、わかりやすかったです。

参加者は私達を含めて7人でした。

まずは歴史から。

ロンドンのハイゲート墓地にある墓石についている番号
各墓石には番号が振られている

1830年代、ロンドンのシティーの墓場は満杯で、墓荒らしも盛ん。

しゃれこうべがボールのように転がっていたのだそうです。

それを見かねて、市の外側に建てられた7つの墓地の1つがこのハイゲート墓地で、1839年にできました。

その年、最初にここに埋められたのは、エリザベス・ジャクソンという女性で、39歳で亡くなりました。

とっさに「早死にだったのね」と思うわけですが、アリスによると、その当時、ここに埋められた人々の平均年齢は33歳だったのだそうです。

ロンドンのハイゲート墓地にある科学者ファラデーの墓
隅っこにあったファラデーの墓

お墓には全て番号が振ってあり、この人のが1番。

何番まであるのか聞き忘れましたが、今も稼働しているお墓ですから、数字はどんどん増えているということです。

墓地の中の大通りに面した敷地の値段が高いという話。

それから敷地には、英国国教会によって清められた部分と、そうでない部分があるそうで、英国国教会の教徒でない人も埋葬できるとのこと。

例えば、電磁誘導の法則を発見した科学者のファラデーの墓は、そうでない部分を選んで建てられたそうです。

ロンドンのハイゲート墓地にあるリトビネンコの墓
他より奥深く埋められているというリトビネンコの墓

ツアーは、このファラデーのような偉人や、ちょっと名を遺した話題の人の墓をピックアップして、その人達の生い立ち、エピソードなどを説明してくれながら進みました。

生きている姿をテレビで見て知っている人としては、アレキサンドル・リトビネンコの墓がありました。

2006年にポロニウム210という猛毒で殺されたロシアの元スパイです。

猛毒が漏れないよう、ほかの人より深く埋められているという話でした。

歌手のジョージ・マイケルの墓もここにあるそうですが、連れて行ってくれず、ちょっと不満。

面白かったのは、Terrace Catacombs という屋内墓地の中にあるひときわ大きい棺の主の話です。

まだ麻酔がなかった時代、手術を手早く上手に遂行した大男の医師だったそうで、当時、手術をすると、4人に1人が死んでいたところ、この人の手にかかると、6人に1人の割合だったとか。

ところが、ある時、あまりに手術を急ぎ過ぎて、助手の指を切ってしまいました。

その飛び血を受けた見学者がショック死したうえ、その助手も傷が悪化して死亡。

ハイゲート墓地内のTerrace Catacombs の中にある棺
上段にあるのが手術上手な医師の棺

手術の対象だった患者も運悪く死亡したという話でした。

その他、移動動物園の興行主の墓石はネロという名の優しいライオン、妻でなく犬を喪主とし、その犬が墓石となっているボクシングで名をはせた男、今も花が絶えないレズビアン作家の墓・・・等々、興味をひかれた話がまだまだたくさんありました。

あっという間の70分ツアーでした。

そうそう、アリスが言っていましたが、火葬は19世紀後半に法的に認められたそうです。

それまでも禁じられていたわけではなかったのですが、この時に法律ではっきりさせたとのこと。

今では、英国では75%が火葬されているそうで、米国などより高い割合なのだそうです。