【2017年8月】今回のロシアでのクルーズ旅行の中で、私が一番好きだったところがキジ島です。
私たちの船は、スヴィリ川から欧州で二番目に大きいオネガ湖に入り、ちょっと北上して、このキジ島に寄港しました。
キジ島は、もともとここにあった素晴らしい木造教会である顕栄聖堂を核として、周辺の町村から移築した伝統的な木造建築が点在する屋外博物館。
ユネスコの世界遺産に指定されています。
ここに着く前、ツアーリーダーのポールが「晴れたら天国、雨なら地獄」と表現した世界の果てのようなイメージの島で、幸い、私たちが上陸したときには、良い天気でした。
後日談ですが、私たちのクルーズがモスクワで終わった後、この船、エセーニン号は、別の客を乗せてサンクト・ペテルブルクに向けて航行したのでしたが、この時には霧が深すぎて、キジ島に寄港できなかったのだそうです。
私たちはローカルガイドのナディアおばさんに先導されて、この気持ちの良い緑の島を歩きました。
残念なことに、目玉である顕栄聖堂は修復中。
本当は21あるはずのキューポラの中ほどが修理中で外されていました。
ナディアは「下部の修理から始まって、来年は上部を修理します。だから二年後には完成」と言いかけて「多分、三年後」と言いなおしました。
修復については、全部新しい木材にしたのでは「複製」になってしまうので、三分の一は元のまま残し、三分の一は新旧混合、残り三分の一は新しい木材を使うという話でした。
この教会はもともと1714年の建設。
メタルの釘を一切使っていないそうですが、ナディアによると「単に釘が高価だったため。その後、釘が安くなると、使われました」とのことでした。
工事中でここへは入れなかったので、隣にある1764年建設の生神女庇護聖堂に入りました。
イコンに囲まれた内装の中で、祭壇の前で修道士の格好をした人たちがロシアの賛美歌を歌って聞かせてくれました。
特にバスの人の声が驚異的で、ズーンと内臓に響く歌声でした。
その先にある裕福な農家の家も面白かったです。
一家が寝起きする本当の意味のリビングルームの一角に大きなストーブがあり、子供や老人は暖かいストーブの上で眠ったそうです。
家具は殆どないのですが、梁の上が物置。
入り口近くの梁が、一種の境界線で、招かれざる客はそこから一歩も中へ入れなかったとか。
招かれた客は中に入り、濃いお茶をサモワールで沸かした湯で薄められたお茶を振舞われたそうです。
お茶が熱すぎるので、ソーサーに移して、すすって飲んだとのこと。
家の中でも常に何かしら仕事をしていたのは女性達で、特に暗い冬場は、指で感じられる紡ぎをしていたそうです。
上の階は客間で、ここには家具がそろっていました。
ここでは、民族衣装の女性が、昔ながらのビーズのアクセサリーを作って見せていました。
昔は、湖で採れた真珠で作っていたのだそうです。
この島の要所要所で、こういった職員が昔の工芸を実演していましたが、全て、廃れた工芸を調べて再現しているものだという話でした。
ヤマナラシの木でできている玉ねぎ型ドームの「うろこ」作成の実演もありました。
見学の最後は、別の教会にある鐘楼の鐘の演奏でした。
鐘の演奏は、その後も聞く機会がありました。
鐘を演奏することは、私たちには馴染みがありませんが、ロシアでは重要な意味を持つようで、その技術も高く評価されているようです。