【1999年5月】イランの北部のアンザリ湿原を楽しんだ後、この日、最初に向かったのは、マスレという村です。
山の斜面に黄土色の家々がへばりついている村で、イタリアなど南欧で見る村の色違いといった風情。
なかなか絵になります。
残念ながら、ここに着いた時には雨がぱらつく天候でしたが。
家々はお互いが連結しあっていて、一軒の屋根の上が人々が歩く通りになっていたりします。
道は細く、この村に自動車で入るのは禁じられているそうです。
最近の大雨の影響で、洪水の跡が見られましたが、昔のままの部分も多く、暗めでしたが、たくさん写真が撮れました。
雰囲気的に、パキスタンのカリマバードを思い出しました。
マスレはイラン人にとっても、特殊な村なので、観光地であるらしく、小さい村なのに、土産物店を見かけました。
特に説明がいる遺跡があるわけでもないので、私達が勝手に歩き回っている間、ガイドのハリルと運転手のアリはカフェに座って水タバコを吸っていました。
イランに来て以来、私も時々、この水タバコを試しています。
甘い香りがして、心地よいものです。
このマスレは標高が1000メートルぐらいあり、悪天候だったこともあって涼しかったのですが、下界に戻ったら、そこは亜熱帯。
またスカーフとコートがうっとおしくなりました。
前日は、この水田風景を日本と同じだと思ったのですが、こうしてみると、タイで見た風景に似ています。
わらぶき屋根の家も多々あり、高床でなくても、2階のバルコニーで生活の大きな部分をやりくりしている様子が感じられました。
と、ここまでは良かったのですが、ここで、ガイドと運転手が「道路のコンディションが悪いので、予定と違う道を通りたい」と言い出しました。
遠回りとはいえ、妥当な範囲なようだったので、彼らにお任せしたら、国境の町、アスタラに停まり、そこの市場で二人が長々とショッピング。
特に運転手のアリは興奮しまくっていました。
この世の一番ダサい物が大集合したようなマーケットだったのですけれどね。
全く興味がわかず、ふらふらしていたら、突然、「ご苦労様」と流ちょうな日本語が聞こえて仰天。
何でも、日本に7年も住んでいたというイラン人で、奥さんはボリビアの日系3世だといいます。
長野県の温泉地にいたそうで、「温泉はいいねえ」などと話しました。
イランの中でも、こんな地の果てのような場所柄と、この会話のちぐはぐさが何とも楽しく、思いがけず貴重な思い出作りができました。
このアスタラもカスピ海沿岸で、もうちょっと北上すると、一度は行ってみたいアゼルバイジャンです。
市場の端っこから海が見えたので、できるだけ海に近づいて写真を撮りました。
ああ、これがカスピ海。
特に美しい景色でもなかったし、チョウザメを見たわけでもないし、水の色が石油色をしていたわけでもないのですが、妙に感動を覚えました。