【1999年5月】イラン北部の町、アルダビールを出発して、4800メートルを超えるサバラーン山方面に向かいました。
この山の麓の高原が、シャーサヴァーンという遊牧民が暮らす地域です。
彼らが織る絨毯が大好きで、一度、どんな人々なのか見てみたかったのです。
途中で、ずっと乗って来た乗用車を置き、ナセルという人が運転するおんぼろジープに乗り換え、山歩きをする達の拠点となっているらしい Ghotorsoei (ゴトルセイと聞こえました)という場所を目指しました。
このナセルは、良い笑顔をしたフレンドリーな人でしたが、乾いた汗の臭いがきつかったのが玉にきず。
ほどなく、写真でしか見たことのなかったサバラーン山の麓に広がる雄大な景色が目の前に迫ってきました。
そして、いました、シャーサヴァーンの人達。
写真通りに半球のテントで、羊や牛、鶏と共に暮らしています。
お茶に呼ばれてテントの中に入れてもらいました。
そこにいたおばさんが笑顔で私に近づき、握手してきたのが、とっても嬉しかったです。
この人たちが使っているマフラシュと呼ぶ寝具袋は平織りのキリムでなく、パイル織でした(ちょっとマニアックですが、このマフラシュに一番、興味があったのです)。
生まれて一時間だという牛の赤ちゃんを見せてくれました。
そこからさらに進んで、Ghotorsoeiに着くまで、こういったテントが点々としていて、雪を頂いたサバラーン山を背景にした光景に感動の連続です。
行き着いた Ghotorsoei は捨てられた倉庫が散らばっているようなところでしたが、一応、お茶屋やケバブ屋がありました。
知らなかったのですが、ここは温泉地。
車を降りてすぐ、「今は女性が入る時間だが、入るか」と尋ねられ、躊躇する間もなく、歩き始めました。
行ってみると、覗けないように幕が張ってある水泳用のプールのようなお風呂が。
プールの中に数人の女性と子供たちが素っ裸で浸かっています。
プールサイドで服を脱ぎました。
たまたま、このタイミングで一人が湯から出てきたので、下着のパンツは履いていることが判明。
こんな展開になるとはつゆ知らず、着替えなど持っていません。
仕方なく、履いていたパンツのまま湯に入りました。
ちょうど良いお湯加減です。
もちろん、私は皆さんの注目の的。
ほどなく、若くてしっかりしたオッパイの子が元気よく寄ってきて、いろいろ話しかけてきました。
全く言葉が分からないというのは、本当にじれったいことです。
それでも、私が日本人であることは伝わった様子。
そして、彼女には娘が何人かいること、どうやら、ここにはお風呂に入りに来るだけで、テントに住んでいるらしいことは分かりました。
子供の数が、彼女の誇りであるらしいことも。
細面で、茶色のショートヘア・・きっと、家族の中でも型破りの強者なのではないかな。
短い時間でしたが、シャーサヴァーンの人達と裸の付き合いができたということで、大満足です。
濡れたパンツは気持ち悪かったですけれど。
お風呂から出てからは、お茶屋でランチ。
ひどく動物くさい「フレッシュな」ケバブが山ほど出されました。
塩が効いていて、それなりに美味しかったです。
その後、お風呂が男性用の時間となり、連れや運転手が入りに行っている間、辺りを散歩。
スノッブなガイドのハリルは、こんなところでお風呂に入っては病気がうつるとばかりに姿を消しました。
歩いていると、子供たちが笑顔を送ってくるのですが、笑い返す以上のコミュニケーションは不可能。
言葉が分からないのは本当に残念でした。
山の天気は変わりやすく、突風で土が舞い上がって辺りが薄茶色になってしまったり、少し、雨も。
ちなみに、汗臭いナセルと連れは、別れる時に、握手の後、頬に3回キスをしていました。