バスステーションにはタクシーが一台しかなく、その運転手が「先客を送ったら戻ってくるから」と言い残して行ってしまった。
しばらくすると、別のタクシーがやってきたが、さっきの運転手を待たなくてはいけない気がして、しばらく、突っ立っていた。
だんだん馬鹿らしくなり、結局、二台目のタクシーに乗ってBejansa というホテルへ。
暖かいし、ベッドは広いし、清潔だし、全く文句はないんだが、完全に素人っぽい。
調度品がばらばらだ。
ここの上の階に住んでいるおばさんがきりもりしているらしかった。
自分の家だからこそ、清潔で機能的なのかも。
安心して眠れる宿だった。
ここも朝食付きで€45と格安。
城も教会も閉まっているし、町自体もあんまりぱっとしない。
カフェでチーズとサラミを食べた後、139の個人が作る工芸品を販売するコーポが教会で店開きをしていたので、覗いてみた。
何となく何か買わないと気まずい気がしたので、写真のフレームと、家の模型が小石に乗っている置物を買ったのであった。
そこを出ると、もう見るところもないようなので、ホテルに戻って一休み。
そしたら、今まで何となく避けていた豚肉とアサリの煮込みが出てきた。
このミスマッチ度はいかにーー。
それぞれの味がするだけで、特に二つを一緒にした必然性は感じなかった。
しかし、それからが楽しかった。
町の年越しの祭り(?)を見物したのだ。
広場にステージとテントがしつらえてあり、パーティーの準備は万端。
町中がぞくぞくと集まってきた。
テントではコップ酒(ワインだけど)やたった€5のスパークリングワインのボトルなどが売られている。
11時ごろから、ようやく始まったバンドの演奏に子供も大人も、はげ頭も白髪頭も、フラット帽の爺さん達も、体を揺すってのっている様子がこの上なく好ましかった。
どうしようもない地元の歌謡曲を胴回りの太い赤いミニスカートのお姉ちゃんと、すんぐりしたオヤジたちと、3人のラッパ吹きが奏でていたんだけれど。
年が明けると、お印ばかり、私がカメラを取り出す暇もないほど短く、花火も上がった。
何だか非常に楽しかった。
さっきまで、ベージャは素通りすればよかったかな、なんて思っていたのだったが。
この年越しは絶対、忘れないだろう。
前日、予約をしておいたのだ。
この日、とうとう運も尽きたらしく、あたりは霧に包まれている。
青空が普通だと安心しきっていたから、ちょっとびっくりし、そしてがっかりした。
ベージャからメルトラへバスの便もあるのだが、平日だけなのだ。
ほんとうに今回の旅、交通手段の不便さにはやきもきさせられた。
タクシーが比較的、安価なのが救いだ。
今回は約50キロの距離で€50だった。
入り口を入ってすぐにかなり長い階段を上って居住空間のある廊下に達する。
ここはおじさんが一人でやっている様子で、朝食の世話はしないから勝手に台所に入って好きなものを飲み食いしろと言われた。
こんなのは初めてだ。