【2019年3月】イングランド南部のカンタベリーに流れる川はストゥア川という名前です。
幅の狭い運河のような川で、ここで観光客向けのパンティングのサービスがありました。
パンティングというのは、長い竿で漕ぐ平たい小舟で、学生都市として有名なケンブリッジで盛んなアクティビティーですが、ここでもやってました。
3社ぐらいが競合しているようです。
私達は、町なかのハイストリートで客引きをしていた「カンタベリー・パンティングCo」という会社のを利用しました。
私達の舟は本格的な木製でしたが、途中ですれ違った別の会社のボートはプラスチックのようだったので、良かったなと思った次第。
もらったパンフレットによると、他人とシェアして乗る場合、大人一人£12.50とありますが、私達は割引値段のっ£11(1600円強)にしてくれました。
多分、お得感を出すために、皆の値段を£11にしているのではないかな、と思います。
ハイストリートから、乗り場のある川沿いに移動。
そこの喫茶店で順番を待ちます。
一艘に最高12人乗れるそうですが、すでに午後遅かったためか、私達と一緒だったのは三人連れの親子だけで、5人の客に一人の漕ぎ手。
英国に長く住んでいますが、パントに乗ったのはこれが初めてでした。
確かに平べったくて水面がすぐ近くに感じます。
そして、ゆっくりのんびり進みます。
船頭さんが少し、観光案内をしてくれました。
かつて、カンタベリー市内のこの川沿いに二つの修道会が拠点を置いていたそうです。
一つはフランチェスコ会で、町の南西側、もう一つはドミニコ会で、ほぼ町の中心が拠点でした。
フランチェスコ会は清貧をモットーとして色の無い修道服を着ていたことから、彼らが英国に到着した時には、あまりに薄汚れていて、誰も聖職者だと信じなかったほどだったとか。
当時、聖職者しか読めなかったラテン語を読ませてテストしたのだそうです。
薄汚れた修道服を着ていたため、彼らはグレー・フライアー(灰色の修道士)と呼ばれました。
これに対し、ドミニコ会は裕福の極みのブラック・フライアー。
当時、黒は紫に次ぐ高価な染料だったそうですが、ドミニコ会の修道士は皆、黒い修道服だったそうです。
ドミニコ会が持っていた建物は、現在は、この町の歴史あるパブリックスクールの美術部や音楽部の建物として使われているとのこと。
私達の船頭さんが言うには、「このパブリックスクールが設立された頃は貧しい少年だけが対象でした。当時、裕福な階層の子供は生まれながらに賢く、教育は要らないと思われていたからです」ということでした。
今はおとなしいストゥア川ですが、かつては氾濫していたそうで、水量調節の水門がありました。
ある時の氾濫では、製粉場とパブが被害を受けましたが、「御覧の通り、今残っているのはパブだけです」。
当時の人々は製粉場を見捨てて、パブを救ったのだそうです。
また、この川は昔は交通手段だったため、川側にドアのある古い建物が見られました。
その一つが今は、ピッツァのチェーン店。
「川下りをしながらピッツァを食べられるよう、このチェーン店と提携しようと交渉したのですが、店員や客が川に落ちることを心配して、成立しませんでした」という話でした。
確かに良い考えなのですが。
同じルートを貸切で借りることもできるほか、夜の幽霊ツアーや、飲み食いしながら郊外をのんびり行くロマンチック・ツアーも催しているそうです。