グラスマーケットと「ラスト・ドロップ」

グラスマーケットと「ラスト・ドロップ」

【2021年6月】今回のエディンバラ滞在中、市内で、まだ行っていなかったところがグラスマーケットです。

グラスマーケットへの道にあるカラフルな店
カラフルな店が目を引くビクトリア・ストリート

ここに至るまでの坂道、Victoria Streetがカーブを描いていて、そこにカラフルな店が軒を連ねていて、絵になるので好きな場所の一つです。

平日のある日、仕事を終えた後、グラスマーケットを目指して出かけました。

旧市街の目抜き通りロイヤル・マイルに出て、「ここだったはず」と思った道に曲がったのですが、どうも様子が違っていて、Victoria Street を見下ろすテラスに出ました。

グラスマーケットに通じるビクトリア・ストリートを見下ろすテラス
ドラマの舞台にも使われたテラス

「あ、ここはこの間、ドラマに出てきたところだ」と言いながら、きょろきょろ見回したところ、細い階段があり、それを下りるとVictoria Street に出られました。

エディンバラ旧市街は、起伏があって、こうしたちょっと秘密めいた通りや階段がたくさんあります。

だから、犯罪小説やホラー映画の舞台にぴったり。

目的地のグラスマーケットは開けた所ですが、ここにも血なまぐさい歴史が詰まっています。

グラスマーケットの東の端
ビクトリア・ストリートからグラスマーケットの東部に出る

マーケットという名の通り、15世紀から1911年に至るまで、牛や馬の市場でした。

グラスマーケットのグラス(=草)は、売り物ではなく、売り物の家畜が食べる物から取った名前だそうです。

ここが特別なのは、市場であっただけでなく、17世紀からは公開死刑執行場だったということです。

特に有名なのは、17世紀後半にカヴェナンター(盟約者)と呼ばれる長老派教会を支持した人々が、ここで100人以上、死刑になった件。

グラスマーケットから見上げたエディンバラ城
グラスマーケットからエディンバラ城を望む

ざっくり言うと、彼らはイングランドによる宗教的な支配に抵抗した人々だったようです。

結果的には、チャーチ・オブ・スコットランドは今もプロテスタントの長老派教会で、イングランドの英国国教会とは一線を画しているわけですから、殺されたカヴェナンター達は浮かばれたと言えるでしょう。

グラスマーケットでの死刑で、もう一つ有名なのは、ここで1724年に絞首刑になったマギー・ディクソンという女性についての話です。

婚外子を身ごもったうえ、死産だったため、赤ん坊の遺体を川に流そうとしたことから「赤ん坊殺し」とされたマギーは、絞首刑となります。

ところが、マギーの遺体を故郷のマッセルバラ(エディンバラの東10キロほど)に運んでいる最中、棺桶がガタガタいうので開けてみたら、彼女が生きていたという話。

しかも、棺桶から起き上がって、マッセルバラまで歩けたほど元気だったのだそうです。

マギーはその後、40年生きたといいます。

グラスマーケットに面するパブ「ラスト・ドロップ」
パブ「ラスト・ドロップ」

良い話ですね!

このグラスマーケットに面して「ラスト・ドロップ(最後の一滴)」というパブがあります。

囚人たちが死刑になる前に最後の一杯を飲んだパブ、というのが言い伝えで、それに惹かれて、行ってみました。

けれど、パブの正面に掛かっていた看板によると、「ラスト・ドロップ」のドロップ(落ちる)は首に縄をかけられた囚人が台から落ちる、つまり死ぬことを意味しているとのこと。

「ラスト・ドロップ」のハギス・タワー
すっかり気に入ったハギス・タワー

暗いですね~。

そんな所ですから、幽霊伝説もあるらしいです。

それはさておき、ここで、またハギス・タワーを食べました。

もう、すっかりお気に入りです。

それからスコッチ。

機会があるごとに、いろいろ試してみて自分の好みの銘柄を見つけたいと思っていたので、今回はアイラ島のCaol Ira というのを飲んでみました。

スモーキーな香りがありながら、渋すぎず、結構、気に入りました。

パブ「ラスト・ドロップ」の内装
「ラスト・ドロップ」の謂れを示す内装

夫は、よりマイルドなスペイサイドのMacallan

ウエイターが「ここのマネジャーは、投資としてウイスキーを集めている」と話していました。

ワイン投資があるのですから、ウイスキー投資があってもおかしくないですね。

ところで、このパブ、今はNicholson’s というパブ・チェーンが運営しています。

そういえば、数日前に行った「コナン・ドイル」パブも同じ系列でした。

どうも、英国中の歴史・謂れのあるパブを買い取って、勢力を広げているチェーンのようです。