【1999年6月】イラン中部の小さい町ダランから、山がちの地形を延々とドライブして、マルボレーという地域へ行きました。
途中、ダムがあり、かなり厳重なチェックを受けました。
ダムというのは、防衛戦略の拠点なのですね。
その後、うとうとしていたところを起こされて辺りを見ると、シンプルなテントがそこここにありました。
遊牧民のバクチアリの人達のテントです。
一か所で停めて、写真を撮り始めると、小さい男の子が大きな声でこっちへ来いと呼んでいます。
とりあえず、受け流して、次に道路から近い丘の上のテントに上ってみました。
まず目についたのは、女の子が糸紡ぎをしていることです。
立ったままどんどん紡いでいる様子は、以前、トルコで見たのと同じテクニックでした。
ガイドのハリルを通して聞いてみたら、紡いだ毛糸は自分で使うだけでなく、売っているとのこと。
冬季に織るのは主にバッグ類だそうで、その一つを外に出して見せてくれました。
部分によって平織りとパイル織を駆使した造りで、模様も、柔らかい赤系の色も素敵です。
織り手と一緒に写真を撮って満足していたのですが、私がいたく気に入った様子を見て、この女の子のお父さんかと思われるおじさんがこれを売る気になったのです。
それなら、と値段交渉。
言い値が30万リヤル(約18750円)のところ、ハリルが20万リヤルに値切りました。
これは嬉しい。
織り手から直に買うなんて、夢がかなった思いです。
もちろん、テントで使われていたものですから、かなり汚れていて、これをきれいにするのは一仕事でしたが。
この人達は、親類同士の3家族が3つのテントに住んでいるとのこと。
おじさんが着ていた半そでのコートも家族の女性が織るのだそうです。
このコート、この辺りのバクチアリの男性が皆、着ているもので、黒白のピアノの鍵盤のような不思議なデザイン。
お茶をいただいて、ここを離れました。
見送りに、道路付近まで下りてきた糸紡ぎの女の子に名前を聞いたら、「シャービー」と言っていました。
「夜の光」という意味の正式名の愛称だとのことです。
ずっと手を振って別れました。
ちょっとした村に出て、そこで、やや動物くさいケバブのランチ。
村の住民は、定住はしているけれど、バクチアリの人達です。
脂身だけを串刺しにして焼くやり方は、数日前、シャーサヴァーンの村でも見ました。
遊牧民たちの学校にも寄って写真を撮りました。
子供たちが皆、人懐っこいです。
こんな僻地の英語教師だという人の英語が立派で感心しました。
帰りには、行きがけに大声で呼んでいた男の子がまた、呼んでいるので、彼のテントに寄りました。
信心深い家族で、ホメイニ師の没後10周年ということで、みんな黒っぽい服を着ていました。
大声で呼んでいた子供の名前はイブラハム。
ビスケット1パックをあげたら、ものの3分で食べてしまいました。
ここでもお茶をごちそうになり、ソーサーの上に砂糖を置いたら、子供たちが指を刺して笑います。
それを見て、お婆さんが、砂糖は別にして服の上に置くのよ、と教えてくれました。
これまた、ところ変われば品変わる。
ちょっとした事ですが、面白いものです。
ここではロバに乗せてもらいました。
決して乗り心地の良いものではありませんでしたが、これも楽しい体験。
旅の連れが、運転手のアリに薦められて、手製のフェルトの帽子を買っていました。