笑いが止まらぬ海の色 3

翌朝は昨夜のテラスで朝食。

置いてあったジュースが何か一つ一つ尋ねたせいか、コーヒーを運んできたボーイが「砂糖はここ」とわざわざ目の前の砂糖の説明までしたのがおかしかった。

このホテルはシンプルながら従業員もみな、感じが良い。

チェックアウトの後にホテルのタオルを持って行ってひと泳ぎし、それから使えるシャワーも備えているそうだ。

今回は泳ぐにはまだちょっとばかり寒かったが。

この夏の予約状況は例年よりもよく、早くも二週間滞在の予約客がいるとのこと。

ロビーには、見たばかりのキリコに通じるやや暗めの色合いの水彩画がたくさんかかっていて素敵だった。

さて、港に下っていくと風が強く、雲も多く肌寒い。

日が照ったり翳ったり。

ここはダイビングのメッカらしく、その人たちのためのボートがたくさん出ていた。

本土からのフェリーが到着した後の10時に、普通の観光船も出るというので、それに参加した。

船の底がガラスになっている。

以前、沖縄に行ったときにこういうボートに乗ったっけ。

船は象の岩と呼ばれる岩のアーチ(たしか、桂林にも同名の岩があったような・・・)や、洞窟2箇所などを巡った。

トレミティは主に3つの島から成るが、そのうちの無人島、カプライア島の沖に聖人の像が沈んでいるとかで、本来ならそれを見て、その辺りに船を止めて泳ぐというのがメニューらしかったが、この日は日光が足りず像は見えなかったし、泳ぐには寒すぎた。

しかしその後、サン・ニコラ島に降り立ったら、空が晴れ渡り、島と海が本領を発揮。

水の色が輝いて、もう、笑いが止まらない。

同じようなのばかりになると覚悟のうえで、写真をとりまくった。

アドリア海は本当に美しい。

その昔、対岸のクロアチアに行ったときにも透明な海に感激したのだった。

サン・ドミノ島はこの辺りの行政の中心で、島のてっぺんには教会があり、その周りが町になっている。

てっぺんの教会は改装が始まったばかりの様子だった。

まだ観光シーズンたけなわというには早かったせいか、旅行者が喜ぶような店があまりなかったが、一軒、陶器の置物を作って売っている店を発見。

大口を開けた魚の置物がかわいらしかった。

そこの人にレストランを尋ねたら、「ちゃんとした料理人を雇わないで、ナポリ出身のおばちゃんが家庭料理を出す店」と「店の主人が自分でつってきた魚で作るフィッシュ・スープが美味しい店」を紹介してくれた。

結局、家庭料理のほうに行く。

美しい青緑色の海が眼下に迫るテーブルで、魚介類の前菜とスパゲッティーボンゴレを食べた。

その日に買い付けた魚しかないから、メニューにない料理がたくさんあるってのも面白い。

さらにデザートはシャーベットしかないという。

おばちゃんが言うには「私が腕によりをかけてデザートを作ると誰も頼まないのに、作らないとみんな欲しがるのよ・・・」。

トレミティにはイタリアの有名歌手が別荘を持っているとかで、その人が日本人カメラマンを連れて、この店に来たことがあるとおばちゃんが言っていた。