【1996年8月】中国の昆明からは、シルクロードの要衝で黄河が流れる蘭州に飛びました。
昆明でタクシーの運転手に筆談で「空港」と書いたら、少し考えて「分かった」とにっこり。
後で、正しい中国語の表記を書いてくれたのですが、「飛行場」に似ていました。
中国西北航空(現在は中国東方航空に併合)に乗り込んで、びっくり。
なんと、使い古しのイリューシンでした。
アエロフロートの機体というだけで、一般人は嫌がるのに、これはそのお下がりです。
非常口にはロシア文字が残っていました。
まあ、それは面白い類の驚きだったのですが、さらに、今度はトイレで仰天。
2つあったトイレの両方とも言葉を絶する汚さで、私には到底、使えず、フライト中、我慢したほどです。
それを見て吐き気をもよおしながら、席に戻る時、子供を連れた母親がトイレに向かっていたので、「汚いよ」と身振りで教えたのですが、トイレを覗いたその人は、ショックを受けた様子もなく入って行きました。
これまでの人生で(2020年現在も含め)体験した一番、汚いトイレはこの機内のトイレでした。
そして、機内でも、がーっ、ぺっと痰を吐く音が聞こえていました。
西安経由の便で、西安で遅れが出たため、蘭州に着いたのは夜の10時半ごろ。
200元(当時、1元=約13円)だというタクシーに乗ろうとしていたら、子供が「May I help you?」と手助けをしてくれ、おかげで、25元のバスで市内へ。
バスの窓からは、真っ白い満月に照らされて、どこまでも工事現場の盛り土のような風景が見えましたが、途中ではたと、あぁ、これは『月の砂漠』だと気が付きました。
中国に来てから、地上の景色についてのこれまでの認識が覆されることがたくさんあります。
蘭州では、蘭州飯店(一泊目380元、二泊目320元)に泊りました。
高かった割に、スタッフの感じがいまいち良くなく、あまり良い印象はありません。
翌日はまず、ホテルの近くの農民巷を歩きました。
小さいレストランや食料品店が並び活気があります。
そのうちの一つに入りました。
中国語のメニューが分からず、おろおろしていたら、店の主人らしい人が私のガイドブックを取り上げ、メニューの対訳のページを開いて、「ほら」。
多分、同じガイドブックを持った旅行者が結構、入る店だったのでしょう。
牛肉とピーマンの辛い炒め物、セロリ炒め、豚肉と青菜が辛いスープに浸かったもの、卵チャーハンで、31元を30元にしてくれました。
この店の人もそうだし、市場の人々も笑顔が良かったです。
ただ、町の中では、私達がちょっと立ち止まると、まわりにこちらをじっと見る人々の群れができました。
これは初体験。
恐いとは思いませんでしたが。
蘭州市内ではミニバスがどこでも客を拾ったり、降ろしたりしていて、一回の乗車が1元。
これを利用して次に行ったのは五泉公園です。
ここはキッチュな中国の遊園地。
20元払って公園に入ると、龍や昔の王様の巨大な人形があり、夜にはライトアップされるようでした。
我々の目的は、ここからリフトで登る蘭山公園です。
蘭州そのものが標高1600メートルほどですが、さらに600メートルほども上る長いリフトに乗りました。
リフトの長さ、高さも半端ではなく、中国はでっかい国だなあ、とあらためて思いました。
もちろん、頂上からの景色は素晴らしく、蘭州の町や黄河が一望できました。
ジェットコースター並みの滑り台があり、休暇中らしいお坊さんたちが滑っていました。
ところで、中国では至る所で、地元民と外国人では、値段が異なります。
外国人値段は地元民の二倍ほど。
蘭州では公園に入るにも、リフトに乗るにも、二倍と分かって払うのは腹立たしいものがあります。
ミニバスの車掌さんが、私がメガネを忘れたのに気づいて、わざわざ車を停めて持ってきてくれるなど、個人はとても親切なのですが、システムとして外国人に厳しく、それを守らせようとする公務員も、学校の生活係のように強面になるため、こちらの心象が悪くなるんだな、と思いました。