【1996年9月】パキスタン北部にある桃源郷、カリマバードを後にして、国境越えで一緒だった英国人のおじさんと一緒に再びジープをチャーターし、さらにカラコルムハイウェイを下って、この地方の州都であるギルギットへ向かいました。
途中、7788メートルあるラカポシ山の氷河が良く見えるポイントや、川が数百メートル下に流れる崖っぷちなど、特徴のある所を通りましたが、この雄大な景色に目が慣れてしまったせいか、それほど感動しませんでした。
一番、面白かったのは、かなりギルギットに近づいた地点で、狭いトンネルをくぐった後、木のつり橋をジープで渡った時です。
渡っている最中よりも、渡り終わって振り返った時に、その高さや不安定さが良く分かり、ぞっとしました。
ギルギットに着いて、ホテルを何軒か見て周り、私達は町の中心からかなり離れた所のNorth Inn に決めました。
英国人のおじさんは、もっと中心が良いと言ったので、ここでお別れ。
一休みした後、「スズキ」と呼ばれる軽トラックを乗り合いバスに仕立てた乗り物で、町へ出ました(片道1人3ルピー:当時、1ルピー=約3円)。
これに同乗した人達や、道を尋ねた人などは皆、親切なのですが、何せ、町を歩いているのは灰色っぽい男ばかり。
風貌そのものは、色目が薄くて白人風の人も結構、いるのですが、皆、髭を生やしていて恐ろし気。
親切な態度も、男性である同行の連れに向けられたもので、めったに私には話しません。
どうも嫌な雰囲気です。
カリマバードではもっと人々がリラックスしていて「ハロー」と声を掛け合って楽しかったのに。
ガイドブックに載っていたティールームに行ってみました。
お爺さんが一人、台の上に座り、お湯を沸かしたり、茶碗を洗ったり。
全てが彼の手の届くところにあって、要領よくお茶を入れます。
壁には過去の旅行者と一緒に撮った写真や手紙が貼ってある他、待っている間、彼が宝物にしているらしい手紙の束を見せてくれました。
お茶自体は、グリーンティーの一種らしいですが、これまでに味わったことのない味。
独特の甘い味がして、美味しくて気に入りました。
おかげで、ギルギットに入って、ようやく楽しい気分になりました。
その明るい気分を引きずって、少しばかり、お買い物。
数えるほどの土産物店があるフンザ交差点で、キリムでできたベストを見つけました。
かなりがっちりしていて、上着の上に着るのが良さそうです。
男性用なのかもしれません。
高いんだろうなあ、と思いながら聞くと、500ルピーと言います。
「あら、安い」と心の中で喜んだのですが、しばし躊躇した様子を見せたら、470ルピーに下がったので買いました。
連れは、フンザ・ウールのプルオーバーを240ルピーでお買い上げ。
意気揚々として帰りの「スズキ」に乗ったのですが、ここでまた気分が沈みました。
乗ってしばらくした時、向いに座っていた男が、端っこに座っていた連れに向かって、私と席を代われ、と言います。
私の反対隣りに別の男性がいて、その人と私が隣り合わせで座っていたのが気に入らなかった様子。
言われるままに席を代わりましたが、気持ちが悪いことこの上ありませんでした。
その後、ホテルのレストランで食事をしましたが、ここでも、食べていたのは皆、男ばかりで、なんとなく居心地が良くありませんでした。
「郷に入っては郷に従え」は真理なので、一人で突っ張っても仕方ないのですが、本当にむかっ腹の立つ社会です。