【2020年9月】イタリアのサルディニア島北西部の突先にあるアジナーラ島は、自然保護区として有名なのですが、私にとってもっと面白かったのは、ここが牢獄の島であったことです。
島の中にかつて、12の牢獄がありました。
トレニーノに乗ったツアーで最初に行ったのが、まさにその、牢獄跡。
しかも「世界最強の牢獄」と言われるフォルネッリという名の牢獄です。
この島が牢獄島になったのは1885年で、それまで住んでいた住民約500人は島から追い出されたそうです。
その後の第一次大戦の時にはオーストリア・ハンガリーの捕虜が徒歩でここまで連れてこられたとのこと。
当初7万人いた捕虜は、途中で多くが死亡し、ここにたどり着いたのは24000人。
島に着いても食べ物がほとんどなく、玉ねぎに似た毒性のある植物を食べたために、さらに8000人が死亡したという話でした。
時代が下り、フォルネッリには政治犯を収容。
さらにマフィアのボスや、左派テロリストの「赤い旅団」なども収容されたそうです。
知能犯だった「赤い旅団」はある時、コーヒーマシーンを爆発させて、天井から脱出を試みましたが、天井もがっちり固められていたため失敗。
壁をぶち抜いて大部屋にして立てこもり、警察や軍と戦いましたが、ガスが使われ、反乱は鎮圧されたとのこと。
大きな事件があったのはこれぐらいで、結局、この牢獄から脱出した人は一人もいない、世界最強の牢獄だったのだそうです。
けれど近年は最悪の犯罪人が集められていることを嫌がる周囲の住民の声が高まった上、維持費がかさんだため、1997年に閉鎖されました。
この建物の中に、椅子が一つ置いてある部屋があり、これを見た観光客が、電気椅子による死刑執行部屋だと思い込んで言いふらしたことがあったそうですが、実は、この部屋は床屋だったとか。
重罪人の身だしなみも気にしたとは、さすがイタリア(?)。
今は建物の老朽化が進んで危険なので、私達は中には入れませんでした。
残念。
島にあった12の牢獄が全て、こんなに強固だったわけではなく、ワイン・チーズ作りや羊飼いの仕事もする囚人のためのオープンな牢屋や、性犯罪人専用の牢屋も。
今でも世界的にそうらしいですが、性犯罪人は他の犯罪者から暴行を受けるので、彼らを守るために別棟にしてあるのだそうです。
割と監視が緩い牢獄から脱出した囚人たちがいて、アジナーラ島とサルディニア本島の間にある小さい島に逃げようと試みましたが、この辺りの潮が強いため、皆、死体で見つかったという話でした。
ちなみに、山の上に城跡のようなものが見えたのですが、これは紀元1100年ぐらいの城で、牢獄があった時期には、見張りの拠点だったそうです。