【2017年8月】ロシアの首都、モスクワでの初日は、夜の9時から「モスクワの夜」というオプショナルツアーがありました。
基本的にこれは、地下鉄に乗りに行くツアーでした。
この時のガイドは、セルゲイという処世術に長けていない感じのぼぅっとした若めの男性。
モスクワ中心までバスで移動し、まずはベラルースカヤ駅に入りました。
モスクワの地下鉄は、宮殿のような豪華な内装で知られます。
最初に開通したのは、1935年のスターリン時代のことで、ぱっと見には、ロマノフ朝の宮廷を思わせる装飾ですが、よく見ると、描かれているモザイクや絵画、彫刻は、いかにもソ連らしい労働者の姿だったりします。
各駅のデザインには当時のトップ建築家が選ばれ、便利さはもとより、その駅独特の味わいを出すのが使命だったとのこと。
例えば、ベロルースカヤ駅は名前にちなんで、ソ連の共和国だったベラルーシを思わせる装飾がされています。
材料には、ウラル山脈や中央アジアなどから採れる様々な大理石、メノウやオニキス、ラブラドライトなどのセミプレシャス・ストーンなどが惜しげなく使われているそうです。
セルゲイは「仕事で忙しい人々はなかなか博物館へ行けないので、博物館を人々のところへ持ってきたのです」と表現していました。
私も夫も、モスクワの地下鉄は初めてではなかったので、豪華さには驚きませんでしたが、驚いたのは、セルゲイが「ラッシュアワーには、45秒毎に電車が来ます」と言ったこと。
ロンドンでは、ピーク時でも平気で5分ぐらい待たされます。
しかも運賃は、どこまででも一回50ルーブル(約100円)。
いちいち比べたくなるロンドンの地下鉄は、中心部で一駅乗るだけで、現金払いの場合、なんと、£4.90(約740円)、カードでも£2.40(約360円)です。
そして、モスクワの地下鉄は毎日、ロンドンの地下鉄の二倍の人を運んでいるのだそうです。
運転手は時間厳守をモットーとしているため、「乗り降りは、すばやく」とセルゲイ。
この辺は日本の鉄道によく似ています(私は、もたもたしていた他人のせいで新幹線から降りられず、はるかかなたの次の駅まで行って戻った経験があります)。
もう夜の遅めの時間でしたが、地下鉄を利用していた地元の人たちは確かに足早に歩いていて、夫が「日本人のようだ」と感想を漏らしていました。
そんなに多くの人々が利用しているのに、駅が清潔できれいなのにも感心しました。
ベロルースカヤ駅から地下鉄に乗って、ステンドグラスがキレイなノヴォスロボーツカヤ駅、黄色っぽい天井のコムソモーリスカヤ駅、ウクライナをテーマにしたモザイク画が素敵なキエフスカヤ駅へ。
最後は、2003年にオープンした新しい戦勝公園駅に行きました。
ここは核シェルターとしても使えるよう、深いところにできています。
モスクワで一番、深いだけでなく、世界の地下鉄駅の中でもトップを争う深さだそうです。
もはや、宮殿のような装飾はありませんが、それでも材料に大理石が使われていて、デザインも清潔さも他の駅に引けをとりません。
ここから地上に出て、戦勝公園へ行ったのですが、雨が降り出しました。
この雨は翌日も、止むことなく降り続いたのでした。
地下鉄に関してその他、思い出したこと。
深いところを走っているので、当然、エスカレーターが長いのですが、過去に訪れた時には、そのスピードの速さに慄いたのでしたが、今回は割りと普通の速さで、拍子抜けしました。
お年寄りや子供向けに改善されたのでしょうか。
それから、翌日の自由時間に、地下鉄を使ってあちこち移動して気づいたのですが、モスクワの地下鉄の駅の名前は、同じ場所でも、線が異なると、駅の名前も変わることがあるということが分かりました。
路線図さえあれば、どこへでも行ける使いやすい地下鉄ですが、その点だけ要注意だなと思いました。