【1996年9月】中国の新疆ウイグル自治区の町、トルファンでの3日目は、初日に出会ったミニバスの運転手による観光ツアーの日でした。
吐魯番飯店のバスルーム無しの部屋に泊まっていたのですが、朝、トイレに行くために廊下に出たら、すでにその運転手がそこに控えていたので仰天。
どのホテルに泊まっているか、というだけでなく、どの部屋に泊まっているかまで、何かしらの連絡網で伝わるのでしょうか。
獲物は逃がさないぞ、といった意気込みが感じられました。
このウィグル人の運転手、名前はアニ。
茶色の髪に、目の色は緑がかっていました。
年齢不詳に見えましたが、聞いたら28歳。
結婚して6年になり、子供が男女一人ずついるそうです。
面白いのは、男女一人ずつ子供がいる場合、3人目を生むと、罰金を取られるとのこと。
最初の二人が男だけ、女だけだった場合には、3人目が許されるのだそうです。
中国の一人っ子政策は有名ですが、少数民族に関しては、規定が異なっているようでした。
彼に連れられて、トルファン周辺の有名どころを殆ど網羅してもらいました。
やはり、赤くはなかった火焔山を見て、その近所のべセクリク千仏洞。
5世紀から14世紀にかけて彫られた仏教遺跡です。
そのほか、アスターナ古墓群(4~8世紀の墓地)、模様が複雑なミナレットの蘇公塔、紀元前2世紀に築かれたという土でできた都市遺跡の交河故城などを巡りました。
地下水を蒸発させないように作った灌漑施設、カレーズについても学びました。
このカレーズのおかげで、乾燥した気候の中、生産が盛んなブドウ造りの農家へも行きました。
トルファンはイスラム教徒のウィグル人が住む地域ですが、昔はワイン造りが盛んだったという話です。
このブドウ園の傍の食堂で、麺を打っている人々を眺めていたら、そこにぶら下がっていた羊の肉にたかっていたアブだか蜂だかに指を刺されてしまいました。
もう、死ぬほど痛くて、運転手のアニに何か対処法はないのかと尋ねたのですが、「30分もすりゃ、痛くなくなる」と言って笑われました。
私にとっては生まれて初めての体験でしたが、地元民には笑いごとなのだなあ。
行った先々の風景など楽しんだのは確かですが、一番、印象に残ったのはアニのことです。
彼の飲食費は全部、こちら持ちだったうえ、朝、車に乗る前に買ったパンと水を見学中に車に残しておいたら、アニが全部、食べてしまったのです。
さらに、彼の頭の中ではブドウ園は追加だったらしく、300元(当時、1元=約13円)で合意したツアーが、ブドウ園を理由に400元に跳ね上がりました。
このあからさまな厚かましさ、あまりにも度が過ぎていて、滑稽なほど。
旅の連れはかんかんに怒っていました。
このアニのせいで、私の中でもウィグル人の印象がすっかり悪くなってしまいました。
トルファン最後の晩は、警察ホテルに泊まりました。
水の出が制限されていた宿で、一泊100元。
なぜ、こういう名称なのか分かりませんでしたが、泊り客に制服姿が多かったのは確かです。