グリニッジのクィーンズハウスの美しい階段

グリニッジのクィーンズハウスの美しい階段

【2019年2月】ロンドン東部のグリニッジにある国立海事博物館の敷地に、グリニッジ・パーク側から入りました。

すぐに目に付いたのは、巨大なボトルシップです。

これは、ロンドン生まれでナイジェリア育ちのアーティスト、インカ・ショニバレが2010年に作ったもので、ネルソン提督が乗っていたヴィクトリー号の縮図が瓶に入っているのだそうです。

ネルソン提督は、トラファルガーの戦いの最中の1805年10月21日、この船の上で亡くなったとのこと。

この博物館の目玉の一つが、ネルソン提督が死亡した時に着ていた制服なのだそうです。

私達は、それは見ずに、敷地内にあるクィーンズハウスを目指しました

もらった日本語の案内書によると、この建物はイングランドで最初の「古典的建造物」なのだそうです。

意味がよく分からなかったのですが、どうやら、それまでのイングランドの宮殿は全て、赤い煉瓦造りだったのに対し、このクィーンズハウスは違っていて、イタリアの建築に影響された建物だということのようです。

イニゴー・ジョーンズという英国の建築家の作なのですが、彼は1598年から1603年にイタリアに留学し、アンドレア・パッラーディオの影響を受けたそうです。

クィーンズハウスが作られた謂れが面白いです。

17世紀初めの王様、ジェームズ1世の奥方の女王アン・オブ・デンマークがある時、狩りに出かけた際、間違って王のお気に入りの犬を殺してしまったそうです。

激怒した王が女王に対して暴言を吐きました。

王は後悔し、女王に謝罪する意味で、このクィーンズハウスを贈ったのだとか。

1616年に注文された建物ですが、完成を見る前の1619年に女王は亡くなったそうです。

結局、建物が完成するのは1636年のこと。

以後、1805年までは王家の人々に使われましたが、この年に当時のジョージ3世が、船乗りの孤児のための施設として明け渡し、さらに1934年に王立海事博物館の傘下に入ったそうです。

今はターナーやホガース、カナレットなど過去400年の優れた絵画のギャラリーになっています。

展示されている絵画もさることながら、ここで目を引くのは、美しいらせん階段です。

チューリップ階段という名前で、この建物のオリジナル。

英国で初めての支柱のないらせん階段なのだそうです。

曲線とブルーの手すりが本当にきれいで、写真の撮り甲斐があります。

写真を撮ったのは私達だけでなく、1966年、カナダから来た夫婦もチューリップ階段の写真を撮ったら、何と、白装束の幽霊が写っていたそうです。

その正体はいまだに解明されていないとか。

展示物の一つに、イングランドが1588年のアルマダの海戦に勝ったのを記念して描かれたエリザベス1世の絵があるのですが、面白いのは、その当時、55歳だった女王がこういう風な表情をしただろうと推測した、動くマスクも展示されていたことです。

このマスクは「The Mask of Youth」という題名。

なかなか面白い試みだと思いました。