【2021年11月】スペインのアンダルシア地方の州都、セビリアにあるピラトの家を見学しました。
ピラトと言えば、キリストを十字架にかけたローマ総督。
スペインにあるこの家がなぜそう呼ばれるかというと、この家がピラトの家を模して建てられたという謂れがあるからです。
ガイドブックによると、リベラ家のタリファ公爵がエルサレムへの巡礼から戻ってきて1519年に建てた家で、旅の途中、公爵は実際にピラトの家を見たのだろうと人々が噂したことから名づけられたそうです。
でも、ムデハル様式を中心に、ゴシック、ルネサンス様式が混ざったこの家が、2000年以上前のローマ総督の家に似ているはずもありません。
ただ、この公爵は、本当に宗教心の篤い人で、自宅から郊外の聖堂、クルス・デ・カンポまでの距離が、エルサレムのピラトの官邸からゴルゴタの丘までの距離と一致することに気づき、この偶然にいたく感動して、十字架の道を築いたそうです。
その基点であるから、「ピラトの家」と呼ばれ始めたのかもしれません。
とにかく豪華絢爛、特にタイルが素晴らしく、夫はタイルに集中して写真を撮っていました。
特筆すべきなのは、メインのパティオ。
イタリアのルネサンス様式の噴水を中心に、パティオを囲むアーチはイスラム建築風。
さらに、四隅に置かれている彫像は、紀元前のギリシャのものだそうです。
それから、階段も素敵。
この階段がある辺りは、すっかりタイルに囲まれていて、イスラム世界の宮殿に入ったかのようです。
ところが、庭に出ると、ヨーロッパ調。
ガイドブックによると、16世紀後半にイタリア人の建築家が改築したのだそうで、イタリア調の彫像が飾られています。
ふと見上げると、ミケランジェロのダビデのレプリカが見えました。
また、言い伝えによると、何代か目の公爵が、セビリアの北9キロほどの所にあるイタリカで生まれたローマ将軍、トラヤヌス帝の遺灰を手に入れましたが、召使の一人が、瓶に入っていた遺灰を埃だと思って、この庭に巻いてしまったといいます。
そして、灰が巻かれた地面からは、オレンジの木がたくさん生えだしたと言われているのですって。
2階は一部、初代の公爵の血を引く家族が今も住んでいるとのこと。
その他の居住空間をガイドさんに連れられて見学することができるそうですが、別料金なので、私達は行きませんでした。
ちなみに、1階と庭の見学は、一人10ユーロ(約1300円)。
QRコードに携帯電話をかざして音声案内を聞くこともできましたが、手がふさがって写真が撮れなくなるので、やめておきました。
その代り、記念に小冊子を購入(6ユーロ)。
人気のある観光地で、けっこう人がいましたが、一見の価値があるお屋敷だと思いました。