【2019年12月】熊本県の天草を目指してドライブしたのでしたが、地図によると、その手前に世界遺産があるとのこと。
これは素通りするわけにはいきません。
三角西港という所で、「明治日本の産業革命遺産」の一つとして2015年にユネスコの世界文化遺産に登録されたのだそうです。
ここは、有名な三池炭鉱の石炭を日本国内や上海に輸送する拠点としてできた人工の港と、それに伴ってできた人工の町。
当時の内務省が派遣したオランダ人の技師、ローウェンホルスト・ムルドルという人が設計し、小山秀という人が建設責任者だったとのこと。
この小山さんは、ほかに長崎の大浦天主堂やグラバー邸などを手掛けた人で、この人の子孫が熊本県のゆるキャラ、「くまモン」を生み出した放送作家の小山薫堂さんなのだそうです。
何でも天草の石工をはじめ、13万人を動員して港だけでなく、背後の道路や水路も築き、町を作ったといいます。
海辺の埠頭や水路は、日本のお城の石垣のようながっしりした造りでした。
このムルドルさんの月給は当時、月500円だったそうで、今の価値に直すと何と、月500万円にも当たるのですって。
当時、日本は明治時代。
政府がそれほどまでに海外技術の導入に熱心だったという証です。
ちなみに、ムルドルさんは男爵の地位を与えられたそうですが、それに不満でオランダに帰ってしまったとか。
大掛かりな工事の末、1887年にできた港ですが、石炭の輸送拠点として中心的な役割を果たしたのは11年間だけだといいます。
というのも、ここは三池炭鉱から44キロも離れていて不便だった上、三池の浅い海を深く掘り下げて大規模な港を建てたため、主要港はそちらに移ったのだそうです。
その後、ここはすっかり放っておかれたため、昔のままの古い家々が残っているとのこと。
白壁の倉庫跡がレストランになっていたり、洋館のムルドル・ハウスが土産屋になっていたり、ギリシャ生まれの作家ラフカディオ・ハーンが泊まった「浦島屋」というホテルが復元されていたりしています。
ムルドル・ハウスではここで作られている素敵な手提げが売っていて心惹かれましたが、衝動買いするにはちょっと手が届くお値段ではありませんでした。
浦島屋のベランダに出てみた時、それまで、どんより雨模様だったのですが、少しだけ日が差し、美しい景色が見られました。
今はすっかり観光地となっている三角西港ですが、漁業もやっているのか、いけすのある魚屋さんがありました。
ここで話しかけてきたオジサンが、上記の情報を語ってくれたのですが、その勢いで、閉まっていた旧高田回漕店を開けて見せてくれました。
本職は知りませんが、ガイドもやっているという方で、この地がロケーションとなったテレビドラマ「坂の上の雲」にも出演したのだとか。
この旧高田回漕店は二階が船乗りたちの宿だったそうです。
というわけで、この三角西港をしっかり観光し、いろいろ学んだために、気づいたら夕刻に。
結局、天草に足を踏み入れられないまま、熊本市に戻りました。
途中、何と言う地名か知りませんが、海辺に出て、すっかり灰色の海を見渡しました。
この辺りの海では海苔の養殖がさかんで、途中、海藻専門の会社の建物も。
そうそう、ちょうど、この三角西港を含めた熊本県のスポットを対象とした写真コンテストが開催されていたので、応募しました。
一等賞は3万円のペア宿泊券だそうです。
当たるといいな、そうしたら、今度こそ天草を旅してみたいと思います。