【2022年4月】私には、初めてブルガリアを訪れた時から、一度行ってみたいと思っていた所がありました。
国の北西部で、セルビアとの国境に近いチプロフツィという絨毯織りで有名な町です。
私は一時、手織り絨毯にとても凝っていて、そのためにイランにまで出かけたのでしたが、それから何年もが過ぎ、絨毯はもう卒業したつもりでした。
でも今回ブルガリア旅行を決めた時に、やっぱり行きたい気持ちが盛り上がったのです。
ブルガリア北部はあまり観光化が進んでいなくて、海外から行く人は少ないとガイドブックに書いてありましたが、確かに、交通は不便。
ソフィアからバスで、2時間半ほどかけてモンタナという町へ。
そこでバスを乗り換えてチプロフツィに行くのですが、何せ本数が少なく、私達はバスステーションのすぐ前の鉄道駅の脇にたった一台停まっていたタクシーに乗ることにしました。
ちなみに、この国のタクシーは皆、黄色です。
運転手とは手振り身振りでコミュニケーションし、チプロフツィまで25レフ(1760円ほど)で行ってくれることに。
バスで1時間の距離なので、これは安いなと思いました。
途中、全くの自然の中を走り、かなり僻地らしいことが分かりました。
町の中心に着いて、運転手が我々が予約していた宿を2人に尋ね、ようやく到着。
この日の宿は、Torlacite Kashta という名前のゲストハウスです。
いつも使っているオンライン予約サイトにはなく、ガイドブックに載っていたメールアドレスでやり取りして予約したのでした。
ところが、着いてみると、私達が来ることを予想していなかったような主人の反応。
この主人(イリヤ)に奥さん(ミレナ)が何か言った様子が、「ほら、私がそう言ったじゃない」と言っている風でおかしかったです。
「昨夜の泊り客の片付けをするので1時間待ってくれ」と言われ、ダイニングルームになっている入ったすぐの部屋のテーブルに落ち着きました。
窓や壁にキリムがかかっているほか、織機があって、いかにも作業をしていた形跡が。
しばらくすると、お婆さんがやってきて、織り始めました。
私達に見せるためかと思ったらそうではなく、注文に応えるために本当に仕事として織っているのでした。
見ていると、大昔、トルコで習ったのと同じ織り方です。
このお婆さんはイリヤのお母さんで、76歳。
毎日、織っているのだそうです。
さすが、年季の入った織り手で、どんどん模様ができていきます。
私がためしにロシア語で「素早いですね」と言ったら、「難しいのよ」と言っていました。
すでに張ってある縦糸に横糸を絡ませた後に、とんとんと櫛のような物で打って固定するのですが、力を込めて打つために大汗をかいていて、途中で休憩していました。
私達は部屋の準備ができるのを待っている間、お腹が空いていたので、何か食べるものはあるか尋ねたら、お決まりのサラダ(きゅうり、トマト、ヤギのチーズ、オリーブ)を自家製ワインと共に提供してくれました。
なんでも、7キロ離れた所に自分のブドウ園があり、お母さんの家にある機械を使ってワインを作っているのだとか。
軽いワインで、素朴な味わい。
イリヤはとても誇らしげでした。