【1996年9月】中国からパキスタンに渡ってきて最初の町、スストでは、バスで一緒だった英国人のおじさんと一緒に行動しました。
バザーという割には何もない所へ行って、その帰りにものすごく着飾ったトラックに出会いました。
ラホールへ行くという人達のトラックで、あまりに絢爛豪華だったので、中まで写真を撮らせてもらいました。
辺りは険しい山と谷の景色。
薄暗くなると、尖った山の上方に半月が見え、マグリットの絵を思い出しました。
その後、ガイドブックで評判の良いマウンテンロッジ・ホテル内のレストランへ行きました。
泊まっていた宿から一歩外に出たら、星空が目の前に迫って、思わず声をあげたほど。
標高が高いせいか(2800メートルほど)、中国のトルファンでの「星の砂漠」よりも、ずっと星が間近で、天の川もよく見えました。
北斗七星も、やけに大きく、近くに感じます。
月の光も煌々としています。
またも別の惑星に降り立ったようで、現実味が感じられませんでした。
さて、夕食です。
蝋燭の光の下で、テーブルを囲みました。
というと、一見、ロマンチックですが、これは9時にならないと電気が付かないというこの辺りの事情によるものです。
出たのは、コリアンダー入りのスープとご飯と、芋のカレー、鶏のカレー、豆のカレー(カレーと言っても、あまり辛くなかったので、シチューと言った方が適切かも)と、チャパティー(薄いパン)。
何しろ、薄暗いので、どういった色をしていたかは不明です。
パキスタンではアルコールは禁止なので、飲み物は水です。
最後にお茶が出て、これで一人100ルピー(1ルピー=約3円)でした。
正直、私には苦手なタイプの食事でしたが、こんなところで、あれこれ注文は付けられません。
その晩、私は平気でしたが、旅の連れがトイレ通い。
私が手を付けなかった豆のカレーが悪かったようです。
パキスタン第一夜にして、早くも「パキ腹」(食中毒による強烈な胃腸炎)にかかってしまった様子。
翌朝もかなり辛そうだったので、ここにもう一晩泊まる必要があるかな、と思いましたが、朝食代わりにお茶を飲み、もうひと眠りしたら、落ち着きました。
それで予定通り、例の英国人と3人で、ジープをチャーターして(1000ルピー)カラコルムハイウェイを下りました。
チャーターなので、これまでの路線バスとは大違いで、途中で何度も写真休憩ができます。
途中の村、パスでは、庭で紅茶を飲みました。
ティーカップ、ティーポット、ティーコージーと、とてもイングリッシュな環境です。
サービスも何やら上品。
峠を越えただけで、こんなにも文化が違うのかと驚きました。
渓谷の風景の中で生活している人々、特に女性は衣装の色が派手で、絵になります。
明るい色のサルワール・カミーズに、人によってはタジクのに似た帽子を被り、大きなショールを被っています。
中には何も被っていない女性もいて、この辺のイスラム教が緩やかであるらしいことが分かりました。
厳しい岩山の麓に、ところどころ緑地があり、村を形成しています。
家は平たい石造り。
段々畑が美しい村があり、ジープの運転手に聞いてみたら、作っているのは芋だとか。
2時間余りの旅の末、目的地のカリマバードに近づいた辺りで、アルティット・フォートを見上げました。
1100年ほどの歴史を持つ塔があり、この地方で一番古い建物なのだそうです。